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ヴィトンダミエアズールトートバッグ編集

「…………」  わたしは、幾乃先生の姿を見て、どういうわけかひどく緊張を覚えた。まるで生命を狙《ねら》っ てきている敵と遭遇したみたいな気持ちになった。だが眼鏡をかけた幾乃先生は別に、普通 の彼女であり、別にわたしに何らかの害を与えるような存在ではなかった。 「ご両親から相談を受けたんで、私も確認してみたんだけど、ほんとうにあなたの作品の 『逢うのは月のむこうがわで』が受賞してるわよ。あなたが応募したのは一年前」 「…………」 「忘れてた?予定より半年以上も選考が延びちゃって、発表が遅れたけど。まあこれはよ くある話なのよ」 「………」 「まあ、一等賞じゃなくて特別賞なんだけど、でも賞を取るってのはすごいことよ」 「…………」  わたしは、ふいに思い出していた。  それは飛び降り自殺した少女の霊がさまよい、未来の月世界へと旅立ち、色々な人や宇宙 人などと出会うという、そういう幻想的なイメージでまとめた小説なのだった。わたしが両 親から「そろそろ勉強に集中しろ」と言われ始めた時期に、ムキになってたくさんの作品を 書いては片っ端から投稿していた時代の、濫作の中のひとつだったのだ。 「…………」
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