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null そして本当に三人は帰って行った。母は「春になったら手続きをして、定時制の高校に入りなさいよ」と言い残した。養父は一貫してしおらしくおとなしかった。長崎へ帰る前に彼の泊まっている京王プラザの部屋を三人で訪ねたとき、「ここのホテル代はすごく高いんだからな」と的外れな自慢をしたのが唯一の彼らしい発言だった。  あたしはすぐに東京弁がしゃべれるようになった。長崎に電話すると「おねえちゃん、なんだか別の人みたい」と妹が淋しがった。あっというまに三月が来て、あたしは定時制高校の手続きをしそこねた。もうとっくに学校のことなんかどうでもよくなっていたし、それより仕事や東京のいろんなことを覚えるのに頭を遣いたかった。  あるときは巣鴨商店街を歩いていて二人の若者に声を掛けられた。なんだかさえないやつらだったが一応部屋に遊びに行った。片方のにきび面の男と二人きりになったとき、そいつはあたしに「チューして」と言った。あたしはおかしくなってその部屋から逃げた。その後も一度だけ商店街で会ったが、声を掛けられてももう返事もしなかった。  まもなく近所の魚屋に勤める十九歳の男の子と仲良くなってセックスした。初めての東京の寒さに、あたしは玉ねぎみたいに重ね着していて、裸になるのにずいぶん時間がかかった。でもその男の子には十八歳の処女の美容師の恋人がいた。小学校の六年生のとき十歳年上の水商売の女と初体験して以来、たくさんの女と関係してきたという彼は、その恋人のことは肉体関係のないまま大切にしているそうなのだった。遊びに来ていいよと言われて行ってみたら、彼女がその男の髪の毛をカットしている最中だったりしてあたしはしらけた。彼女も同じ商店街の中の美容院に勤めていて、その何もかも地元で用が済んでいる感じも好きじゃなかった。あたしが彼と仲がいいのを知って、「たまには女同士で飲みましょうよ」と誘ってきた彼女に、「あたし、あの人と寝たよ」とあたしは言ってやった。まだ男を知らない彼女はぼんやりと悲しい顔になった。肉体関係込みで男とつきあったこともないくせに、とあたしは冷たい気持ちになり、彼らへの興味をすっかりなくした。  もう一人、商店街の中のパン屋の女店員に知り合いが出来た。ときどきパンをただでくれたり、お酒をおごってくれたりするので相手にしていたが、どうもうさんくさい女で、好きにはなれなかった。何かとあたしをかまうのも、あとで自分のために働かせるための準備だというのが見え見えだった。最初は魚屋の男の子の話などしていたが、だんだんつきあわないようになっていった。新宿まで出るようになったのはその後のことだ。  店の名は「怪人二十面相」。伊勢丹の裏の、エレベーターもない小さな雑居ビルの四階にあった。あたしはそこで沢山のミュージックビデオを見て、自分が長崎にいるとき音楽だと思っていたものが、そのほんのさわりだったことを知った。そこに夜あつまってくる人々はみんな魅力的で綺麗だった。みんなあたしより年上で、客は東京の人間が多かった。逆に店員の男の子たちはほとんど地方から来ていた。みんなきちんとリーゼントにして、腰の部分がゆったりしたズボンをはいていた。  あるとき梶という店員の男の子があたしの部屋に泊まった。背が高く、体格のいい男だった。彼は当たり前のようにさっさとあたしとセックスした。とても大きなペニスをしていた。正常位で普通に動いていただけなのに、あたしはいってしまった。十五歳の時、塚田の母親が経営するスナックに昼間もぐり込んでしたとき以来の絶頂感だった。あたしが驚いていると、梶は避妊する様子もなく膣内《なか》に射精してしまった。起きあがってティッシュでそこを拭っていると、梶の精液が出てきた。 「あ、出てくる」  とあたしが言うと、梶は、 「だめだよ、中に入れとかなきゃ。子どもできないじゃん」  とあっさり言った。そして、背中を向けて寝てしまった。  翌朝、会社が休みだったあたしはずっと梶と一緒にいた。夕方近くなると、彼は「そろそろ店行かなくちゃ」と言ってリーゼントに櫛を入れた。 「いい歳してこんな頭したくないんすけどねえ。決まりだかんね」  そんなものなのか、とあたしは思った。彼の歳は二十三、四くらいだったはずだ。ポマードの沢山ついた彼のリーゼントは、櫛を入れるだけできれいに元通りになった。山手線の中で、あたしは自分のあそこから梶の精液が降りて来るのを感じた。ナプキンを当ててくればよかったと思った。新宿に着くと、梶は、